メンヘラゴリラのにっき

ポセマニュ子の承認欲求を満たすためのブログ

レム睡眠劇場 ~とりのたま編~

 お題「最近見た夢」

 

現国の授業で山月記をしていたとき、雄鶏にファックされる虎の李徴がどうとか酷い話題で盛り上がっていた。
山月記に雄鶏が登場していたかどうかなんてもう覚えていない。
女子校には異様な結束力が存在する。

非常勤講師のじいさんの眠い講釈を、その結束力をもって無視するのだ。
朝練で疲れていた私は話もそこそこに眠ってしまった。
今日の授業は午前でお終いだったけど、少し寒いくらいのクーラーが心地よさ過ぎたのが悪い。

 

衣替えをしたばかりで、半袖のブラウスでは鳥肌がたつ。
部活を終えるといつものようにトランペットのレバーを捻り、溜まった唾液を雑巾に零す。
当番の先輩に椅子と譜面台の片づけ当番を押し付けられた。
同級生に手伝って貰い、コンビニでパピコを半分こしてから別れた。

地下鉄森谷線青橋駅を出ると、空は鈍色で湿気ていた。
降ったらやだな、と暫く空を見上げていると、視界の端に見慣れた赤色が飛び込んできた。
尚子伯母さんが迎えに来てくれたのだ。
昼食には少し遅いが、ハンバーグを食べに連れていってくれるらしい。

 

お店で出てきたのはハンバーグというよりミートローフだった。
目の前の伯母はカトラリーを綺麗に操り、サラダ、ミートローフ、ライス、ポタージュ、サラダ、ミートローフ、と未だに三角食べを真面目に守って食べている。染み付いた習慣はなかなか取れないものだ、と感心した。

「私、緑の紙を貰ってきたわ」

危うくグリーンピースを逃がしそうになったが、少しばかり音を立ててフォークで突き刺すことによって事なきを得た。

「それが良いと思うよ」
気の利いた返事の出来ない私は、ミートローフの真ん中に埋まったゆで卵と、少しパサついた瞳で見詰めあうことでやり過ごした。

卵の黄身を最後まで取っておくのは、視線の置き場に丁度いいからだ。

 

お店を出て、レジでもらったタブレットの封を切る。

ふと、とりのたまリムペグ東店があるのが目に付いた。

そういえぱ、私の好きな乙女ゲームブランドが新作を出していたはずだ。

ちょっとゲームが欲しいから寄って行っても良い?と尋ねると伯母さんは樋口一葉さんを握らせてくれた。

伯母さんが車の方向へリモコンを向けるとライトが二回点滅した。鍵は開いたままだったらしい。

 

とりのたまはヲタク御用達のお店だ。

私の住んでいる街の、とりのたまエバクリン茶屋町店はABC-Zグラフトと同じビルに入っていて、ワンフロアしかない。

それに比べてリムペグ東店は17階建ての自社ビルで、さながら摩天楼のようであった。

 

 ビルに入ると目の前にフロアガイドと巨大なエスカレーターがあった。

 

お目当ての女性向けコーナーは16階にあるらしい

長いエスカレーターは螺旋状で1本に繋がっていて、好きな階でひょいひょい乗り降りするのだ。

なかなか乗るタイミングが掴めなくて、イラチな後ろの客に舌打ちをされる。

ムカついたからエスカレーターの真ん中を陣取ってやると、後ろでコツコツ靴を鳴らす音が聞こえた。

 

そんなこんなで10Fを過ぎた頃には舌打ち野郎もいなくなっていた。それにしても長いエスカレーターである。天井が近づくにつれて、赤くて大きい何かが吊り下げられていることに気づいた。

目を凝らしてやると、心做しか魚の形をしているような…

赤い魚ときたら嫌な予感しかしない。

私の大嫌いな金魚じゃなかろうか。

考えただけで鳥肌が立ち、冷や汗を垂らしながら13Fで飛び降りた。

階段で上がって、ゲームを買ったらエレベーターで降りよう。そう考えたのだ。

成人向けコーナーだったようだ、制服姿の私はギョッとした視線を向けられ、足早に通り抜ける。周りが縁日臭い気がして吐き気がする。階段を登ろうと14Fを見上げて固まった。破れたポイが空気中に浮かんでいく。ぽたぽたと臭う水滴が落ちるなか、無数の金魚が背鰭を下にして泳いでいた。

 

半泣きになって階段を駆け下りた。

8Fについた頃には息はすっかり上がってしまったが、少し落ち着きを取り戻していた。

どうやら8Fはグッズコーナーらしい。

素通りしてエレベーターホールへ向かうが、全くもって普通のフロアだった。

 

エレベーターホールにはクッションの置かれた謎の台が設えてあった。

↓ボタンを押して待っていると、視界の端で何やら桃色の物体が蠢いた。

それは猫のようであった。不細工なキャットウォークで台に近づき、クッションに飛び乗った。

 

桜餅に似た配色の猫は私を見るや、眠そうに、ゆっくりと目を閉じた。
道明寺風猫のケツを撫でていたら、わさわさという毛を撫でる感触から萎びた感じのしびしびという感触に変わった。

 
違和感を感じた手元にはキャベツがあった。
外皮が濃い緑で苦そうなキャベツだった。

手元のキャベツに関心が移っている内に猫は消えてしまった。

 

なんにも買っていないのに恐ろしく疲れてしまった。

駐車場では伯母さんが待ってる。

今夜はロールキャベツを作ってあげよう。

キャベツを抱えてエレベーターを降りた。